私はもともと音楽が好きでCDショップに勤めていました。
しかし音楽が売れなくなり、勤務していたCDショップが倒産しました。
やむをえず音楽に関わる仕事を諦めて、次の職を探し始めました。
その際「自分が継続して高い関心を持てることを仕事にする」ことを重視しました。
「こどもが大きくなるまで、こどもには安心安全なものを食べさせたい」
その時、自分の中にあった大きな関心事がこれでした。
そんな理由から、私は小牧市にある有機野菜・無添加食品の宅配会社に入社しました。
この会社に入社して私の中の「食」についての意識が大きく変わりました。
人間が生きるうえで欠かせない「食」について、自分がいかに関心を持っていなかったかを思い知らされました。
「こどもの安心安全」なんて語る以前の問題でした。
飽食の時代に生まれ、何の不自由もなく食事ができる環境で育ったためか、そのありがたみを特に感じることがなく、「食」は自分の中でとても優先順位の低いものでした。
1人暮らしをすれば、インスタント食品や外食ばかりで、趣味にお金を費やすために食費を削ることになんの疑問も感じませんでした。
野菜に旬があることや、味噌やしょうゆなど毎日食べている食品が、どうやって作られているのかすら、まともに知りませんでした。
私はこの会社でスーパーに並ぶ大量生産の食品ではなく、昔ながらの製法で作られた伝統的な食品に触れる事で、本来のおいしさを知りました。
また発酵や保存といった先人の知恵の偉大さに驚かされました。
実際に味噌や豆腐、梅干や漬物などを自分で作るようになりました。
しだいに、自分のなかで「食」の存在がどんどん大きくなっていきました。
これまで単にお腹を満たすための行為でしかなかった「食事」が、
楽しいもの/喜びを感じられるもの/幸せを感じるものに変わっていきました。
・毎日の食事が充実することが、日々の生活の心の豊かさにも繋がりました。
それにより、食べることへの感謝の気持ちが自然に生まれるようになりました。
・きちんと気持ちを込めて「いただきます」が言えるようになりました。
・料理とちゃんと向き合って食事をしようという気持ちになりました。
そのため楽しんで食事が出来るよう環境を整えました。
・テレビを見ながら/本を読みながら/スマホをいじりながらの食事をやめました。
・忙しい朝でも余裕を持って食事が取れるように生活習慣を見直しました。
わたしにとって、この気づきは非常に大きなものでした。
そして私は自ら作ることを選びました。
スーパーに並んでいる野菜の多くは、形や大きさという出荷基準をクリアすることを第一に作られているため、おいしさを目的に作られていません。
調理次第でおいしくなりますが、やはり素材の味はとても大切です。
毎日食べる野菜がおいしければ、食はもっと楽しくなります。
食べることの喜び・幸せは、ありがたみを感じながらおいしくいただくこと。
私は、それを気づかせてくれた「おいしい」野菜を自らで作り、食べてもらうことを、残りの人生をかけて取り組みたいと思うようになりました。
これが私が農業を始めた理由です。
安心安全はもちろん、毎日の食事が楽しく、人生を豊かにしてくれるような「おいしい」野菜をお届けできるような百姓になりたいと思っています。
おもいでファームのなかの人
近藤文樹(こんどうふみき)
1975年生まれ。江南市在住。
獨協大学経済学部を卒業し、地元の複合書店に就職。
CDショップ、小牧の有機野菜流通企業を経て、40歳を目前に就農を決意。 江南市にある「なのはな畑」で1年間農業研修を受け、2016年7月に江南市で就農。
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